以前私は、アンティークウォッチを店頭に並べる前のメンテナンスについてお話したことがありました。
--- アンティークウォッチを扱う私たちにとって、メンテナンスは非常に重要で、かつやりがいがある仕事であると考えております。 本当に価値があると思える時計なら尚の事、 「折角縁あって私たちのお店にやってきた時計達、出来るだけよい状態に戻してあげたい。」 と考えてしまうのです。 その時その時で、私たちがベストと思えるメンテナンスを選択しています。 時には遥か遠い国にだって時計を送ったりします。 もちろん、一つ一つの時計のオリジナリティを出来る限り保存することは大前提としてありますが、今回のように常にそれがベストという訳でもないような気がします。 その際、コストのことは後で考えます。(!) 結果として大変なことになってしまうことも時にはありますが、アンティークの商売とはそのようなものではないでしょうか。 ---
と、過去に書いた分のコピーペーストで字数を稼いでしまいましたが、私たちのお店では、このような思考回路の元、コストと時間に関する諸問題はさておきメーカーさんにお願いしてしまうことが多々あります。 そしてメンテナンス前とメンテナンス後では別人のようになって帰ってくる例も少なくありません。 例えば
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そうです。ブレゲ様によるタイプXXのオリジナルモデルです。 実はこの時計、どうしてもクロノグラフ関連に復活しきれない部分があり、何とかならぬものかと私たちなりの方法でメーカー様に御願いしてみました。 そして約1年に及ぶ時間と、現行のタイプXXが1本買えてしまう程のコストを費やして帰って参りました。
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付いてきた修理明細によれば、これはいきなりなんと「修理(repair)」ではなく、「修復(restoration)」であるというではないですか。 その内容は
・ムーブメントのコンプリートサービス ・ケースの仕上げ直し ・風防交換 ・文字盤や針の一式交換 ・セッティングレバーやクロノグラフランナーその他内部パーツ交換
なんだそうです。 そのお姿は文字通りぴかぴかで、そのご威光に負けてJCぺランさんのゴージャスな革ベルトに交換してしまったではないですか。 伝説のマリー・アントワネットを復元してしまうメゾンさん、フライバッククロノなんて難しいはずはないのでしょうが、やはりこの細部から滲み出る丁寧なお仕事は感動を呼んでしまうのであります。
もちろん部品を交換すればするほどいわゆる「オリジナリティ」は下がるという考え方もあり、それをマイナスととられる輩もいらっしゃる事と存じます。 私も通常、全てがオリジナルのままで、かつコンディションにも恵まれていればそれ以上のことはないと思いますし、変に部品を交換してしまうくらいなら多少見栄えが悪くてもそのまま古い部品を残す方ではないかと思います。
しかしながら今回のレストレーションは、この歴史的タイムピースを生み出したメゾンさんが、その美意識に基づいて行ったものであると思えば違った意味で妙に納得出来てしまったりしまして、いずれにしてもこんなにシャキットしたオールド・タイプXXはそうそうお目にかかれるものではない・・・・
と、人知れず深く頷く私でした。