と、前置きがどんどん長くなってはまた申し訳ないことになってしまいますので、本題に入ります。
と、本題に入ると何故か急にカレラ(商品番号:197586、商品番号:197616)の話題です。 何故かと言いますと、ホイヤーさんの時計を色々眺めるにあたり、このカレラによって急に「ホイヤーさんらしさ」を発揮し始めた感が強く、その証拠に(?)同社として初のシリーズ名付きの腕時計であるようでもあるのです。
カレラといえば1950年から始まった "Le Carrera Panamericana Rally Mexico" という、グァテマラからアメリカまでの砂漠や草原や山や熱帯のジャングルを越えて約3500キロを走破するという、当時としては大変に厳しかったレースにちなんで名づけられたそうです。 このラリーは1954年を最後にたった5回で終わってしまったようですが、やはり50年代当時の車には厳しすぎたのでしょうか。しかし、その厳しさ故、多くの多くの伝説を残したレースでもあったようです。
最後のレースから10年の歳月が過ぎた1964年、ホイヤー・カレラが発売されました。 何でも有りな現代の時計に色々と触れてしまっている私には、 「極シンプルな普通のクロノ」 という第一印象しか持てなかったのが正直な話です。 きっと多くの方のこの時計に対する感想はその程度かも知れません。(ホイヤーさん、ごめんなさい。)
しかし、それだけで終わっては余りに浅はかと言わざるを得ません。
「わたしゃそんなの興味ないからねえ。」 とおっしゃる方、あなたのご意見はもっともですが、ちょっとあっちへ行っていて下さい。
その類稀なるシンプルさ、妙に古臭くないそのデザイン、もう一度よーくカレラさん達を眺めてみましょう。 それまで一般的に「売れ筋」とされてきたクロノグラフとは、明らかに異なるモダニズムがあります。 これは単に時代が60年代に移ったということではなく、明らかに意図的に、次世代のスタンダードを作り出すべく奮闘したホイヤーさんの挑戦だったのではと、私は勝手な解釈をしております。
1、アプライドのバーインデックスとバトン針。 2、かつては入れれば入れるほど良しとされていた感のあった(?)、タキメーターやパルスメーターやデシマルカウンターなどのスケール類を一切なくす、もしくは1種類のみとして文字盤の最外周、もしくはインナーベゼルに追いやる。 3、全く持って細く、何ら装飾のないベゼル。 4、極普通のラウンドケース、極普通のラグ。
70年代には当時の流行となった独特なトノー型的ケースが用いられたりもしますが、基本はあくまでシンプルです。 そして実は、世に言うほとんどのカレラに、これらの要素が当てはまってしまうのです。 全てはより理想的なクロノグラフ開発の為、ホイヤーさんは頑張りました。 そしてカレラの初期のモデルに見られる、同時期の他社のモデルとはなんとなく(?)異なる気のする「モダニズム」は、ホイヤーさんがタグ・ホイヤーさんになるまでのモデルすべてに貫かれていたような気がしてなりません。
ムーブメントは余り変わらなかった外観とは別に、世間の事情もあって色々と変化して行き、実に多くのバリエーションが存在します。
初期はやはり名機の誉れ高きバルジャックス製ピラーホイール搭載の手巻きクロノです。 ときどきランデロンなんかも、2つ目や1つ目のタイプに見られます。
そして世の中はカム式クロノに移行し、突然ピラーホイール式は「古典的」、なんて呼ばれ始めます。
さらに少し遅れてクロノグラフにも自動巻化の波が押し寄せます。 そうです、かつてのライバル達と手に手をとって、大枚をはたいてやっと完成させた、悲劇の名機、クロノマチックです。 その後、もはやレイモンド家の面影を失ったバルジュー7750や、レマニア5100を搭載したモデルも作られましたが、1986年頃、ホイヤーさんが新生タグ・ホイヤーとなるにあたり、カレラはカタログから消えてしまったようです。
90年代末に突如復刻され、いまだにタキメータークロノなどの大ヒットを飛ばしたりしていますが、ある意味、カレラは一番ホイヤーさんらしい時計なのかな、なんて思います。


